受賞 「第36回電気通信普及財団賞(テレコム社会科学賞)」奨励賞、「第45回中小企業研究奨励賞」準賞(田路則子教授著『起業プロセスと不確実性のマネジメント』)
当研究センター所員の田路則子教授(経営学部)の著書『起業プロセスと不確実性のマネジメント-首都圏とシリコンバレーのWebビジネスの成長要因-』が、公益財団法人電気通信普及財団の「第36回電気通信普及財団賞(テレコム社会科学賞)」の奨励賞、一般財団法人商工総合研究所の「第45回中小企業研究奨励賞」の準賞を受賞しました。本書は「法政大学イノベーション・マネジメント研究センター叢書19」として、2020年3月に白桃書房より刊行されたものです。
「電気通信普及財団賞」は、1985年度より情報通信技術の普及、振興を目的に、情報通信における社会科学的又は工学技術的観点からの優れた著作や研究論文を表彰しており、「少子高齢化に直面し、年々日本の国際競争力は低下している。経済の活力の復活には『新』を生み出す起業が非常に重要である。本書は、Webビジネスについて定量的に起業の『真実』に迫っている。また日米の起業事例についてフィールド調査を行い、不確実性への対処方法を示している。Webビジネス以外の起業にも本書はアイデアを提供するものであり、示唆に富む著書である」との受賞理由です。
「中小企業研究奨励賞」は、株式会社商工組合中央金庫(商工中金)の創立40周年を記念して、1976年に創設された歴史と権威のある賞です。中小企業に関する図書または定期刊行物に発表された論文を対象としています。
田路教授の受賞の言葉です。
「本書は、首都圏とアントレプレヌールシップの聖地と讃えられるシリコンバレーのスートアップを7年間追跡したものです。2010年代のWebビジネスにおいては、日本は米国よりも成長性が低くはないという発見は通説を覆します。起業家の年齢は30代半ばであり、資金調達と成長の確率にも大差はない。ただし、レーター段階の投資額は桁違いに少なく、結果としてユニコーンの輩出が日本では少ないことが説明できます。世間では、GAFAに大きく水を開けられている日本企業の弱さが指摘されていますが、それは、起業時点における製品サービスのハイテクレベルの低さに起因するであろうことが、本書の日米比較により推論できます。しかしながら、世界の中でシリコンバレーは例外であり、首都圏のWebビジネスは、今後、AIの伸長や若い世代の活発な起業によって勢いを増すでしょう。
本書はまた、成長したサンプルを取り上げて、起業機会の認識と意思決定を解き明かしています。起業家は仕事の経験やネットワークを活かして機会を認識し、不確実性の高い状況下において、曖昧さを抱き込み、予期せぬ事象を逆手に取るような意思決定を行なっています。そのようなエフェクチュエーションの理論に則った意思決定は起業だけではなく、新規事業のマネジメントにも活用できることが、読者におわかりいただけると期待しています」。
田路則子教授 主要研究業績
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター叢書